金融庁は 今年1月に
損害保険ジャパン株式会社
及び
SOMPOホールディングス
株式会社に対し 下記のとおり
業務改善命令を発出しました。

36行目  処分の理由から掲載
1.損保ジャパン
 当庁検査及び保険業法第128条
第1項に基づく損保ジャパンから
の報告の結果
以下の問題が認められた。
問題の所在
損保ジャパンと
ビッグモーターとの関係
株式会社ビッグモーター並びに
その子会社である株式会社
ビーエムホールディングス及び
株式会社ビーエムハナテン(以下
これら3社をあわせて「BM社」
という。)は、全国で店舗展開を
行っている大手中古車販売業者で
あり 損保ジャパンを含め複数の
損害保険会社から損害保険代理店
としての委託を受けて
自動車保険及び自賠責保険
の販売を行っていた。
損害保険代理店としてのBM社は
2022年度の取扱保険料が
約200億円であったが
そのうち損保ジャパンの保険料は
約120億円シェアが60.5%であり
BM社の所属保険会社7社のうち
損保ジャパンが最大のシェアを
占めていた。
損保ジャパンの保険料の内訳を
みると 2022年度は
自動車保険は約97億円
自賠責保険は約20億円となって
足元で自動車保険に係るシェアが
減少傾向にあった中
自賠責保険に係るシェアは
増加傾向にあった。
また BM社は
板金・塗装部門を設置し
一部の店舗では自動車修理工場を
併設しており 損保ジャパンを含む
損害保険会社から 自動車事故
の際に事故車両の修理を
希望する顧客の紹介を受けていた。
BM社では 損害保険会社から
入庫紹介を受けることで
同社の修理工場の売上につながる
という利点がある一方
損害保険会社側では
BM社に入庫紹介を行うことで
自動車保険の販売促進や
自賠責保険の獲得による
保険料収入の確保などが
期待できるといった利点が
あったと考えられる。
不適切な保険金請求事案について
上記のように損害保険代理店
としての事業を含めて
自動車の販売・整備・修理といった
一連の自動車関連事業を営む
BM社においては 修理車両の
車体に損傷を新たに作出して
修理範囲を拡大することや
不要な板金作業・部品交換を行う
ことで保険金を水増し請求するなど
の極めて悪質な行為を行っていた
ことが発覚しており
こうした不正行為に基づく
不適切な保険金請求が
BM社における広範囲の修理工場で
組織的に反復・継続して行われて
いた実態が認められている。
損保ジャパンをはじめとする
損害保険会社各社は
BM社に対する事故車両の入庫紹介
を積極的に展開していた中で
当該不正請求が発覚したのであるが
とりわけ 損保ジャパンにおいては
2015年5月から
2023年1月までのあ
いだ
BM社からの要請を受けて
板金・塗装部門に出向者を
派遣していたこと

BM社からの保険金請求に対する
損害調査において同調査の
専門職である技術アジャスターの
関与を省略する簡易な調査を
運用していたこと
不正請求発覚後
損保ジャパンを含む大手損保3社
からBM社に対して事実関係の調査
を求めており 同3社では
2022年6月からBM社への
入庫紹介を停止していた中
損保ジャパンだけが同年7月に
入庫紹介の再開という
経営判断を行ったことなど
BM社の不正請求に関連して
損保ジャパンからBM社に対する
対応の適切性等に疑念がある
事項が認められた。
こうした点を踏まえ本件不正請求に
対する損保ジャパンの対応状況に
ついて検証したところ
以下に記載しているとおり
損保ジャパンの経営管理
ガバナンス態勢や3線管理態勢
それぞれの内部統制に
重大な欠陥がありBM社に対する
管理・けん制態勢が無効化していた
実態が認められた。
BM社による不正請求は
その悪質性から損害保険業界全体の
信頼をも失墜させかねない極めて
重大かつ影響力のある事案であり
損保ジャパンのBM社に対する管理
けん制態勢が無効化していた実態は
BM社に不正行為を惹起させる
「土壌」(不正行為等を行い得る
「機会」の存在)を生じさせると
ともに、結果としてBM社の
不正請求を助長し、顧客被害の拡大
につながったことを考えると
損保ジャパンのBM社に対する
一連の対応には重大な問題が
認められると言わざるを得ない。
2 態勢上の問題
①個別の問題における態勢上の問題
ア  出向者によるBM社の不正に
関する実態報告への対応放置
損保ジャパンは、2015年5月から
BM社の板金・塗装部門への出向を
開始し、2023年1月までの間に
延べ8名の出向者を派遣していた。
これらのうち一部の出向者は
BM社において 利益を過度に追求
する運営実態等が存在するなど
不正請求の背景・リスク予兆となる
情報のほか
BM社の全工場の修理費用の見積り
を担当している部門が
現場に不要な作業を実施するよう
指示している実態など組織的な
不正請求の蓋然性が高いと
考えられる事象 不正が
確信される事象などについて
損保ジャパンの営業部門や
保険金サービス部門に対し
継続的に複数の報告を行っていた。
しかしながら、これらの報告を受け
た営業部門や保険金サービス部門は
厳格な指導や調査を実施した場合の
BM社の反発やそれに伴う営業成績
・収益への影響を懸念してその対応
を放置している実態にあった。
また営業部門や保険金サービス部門
をけん制すべき立場にある法務・
コンプライアンス部は
こうした不正請求に関する調査態勢
を整備していない実態にあった。
このように、損保ジャパンはBM社
に対して、組織的な対応を講じて
おらず、結果として
一連の不正請求の検知が遅れ
被害の拡大を招いている。
次回に続く