問題です
夫の運転する自家用車に同乗中
運転ミスによる自損事故で
妻がケガをしました。
誰(どこ)に損害請求できますか?
答えは夫の自動車の自賠責保険です。
新車登録時や車検時に強制で加入する
保険です
自動車損害賠償保障法3条は
「自己のために自動車を運行の用に
供する者はその運行によって
他人の生命又は身体を害したときは
これによって生じた損害を賠償する
責に任ずる」とあります
自賠証明書
この条文からすると
他人にケガを負わせたり 死亡させた
場合に自賠責保険が救済してくれる
ことが読みとれます。
傷害の場合1人当たり120万円限度で
死亡は3000万円限度支払われます。
そこで夫婦が 他人にあたるのか
どうかの問題になります。
普通に考えれば 家族の中で
誰かが賠償責任を負い
誰かが請求権を持つこと自体が
おかしなことです。
なので妻は他人でなく 保険からは
支払いは受けれないという理屈でした。
しかし昭和47年の最高裁判決において
同乗していた車の実質の保有者が
夫であれば妻は運行供用者とは言えず
「 妻は他人 」として自賠法16条の
被害者請求を認めています。
あくまでこのケースで夫と妻が
他人とされたのは
当該自動車の使用形態
所有者名義 車の維持費や
妻の運転免許の保持か否かなど
個別背景に基づいて判断されました。
なんともややこしいキ-ワ-ドの
「 運行供用者 」ですが整理すると
” 自己のために運行支配
運行利益の両方を有する者 ”
とされています。
少し分かりずらいので
運行供用者の具体例を見てみると
① 車の実質の所有者が
運転者で人身事故が起きた場合は
その運転者。
② 会社が所有の車を従業員が運転中
人身事故を起こした場合は  運転者と
会社が運行供用者として責任を負います
③ 家族の車を無断で運転した場合や
従業員が会社の車を断りもなく
運転した場合 その運転者はもちろん
ですが 場合によっては車の保有者も
連帯で運行供用者責任を負う
場合があります。
④ 車を盗んだ泥棒運転者本人は
運行供用者責任を負います。
ただし保管や管理に過失があった場合は
盗まれた保有者側も
責任を負う場合があります。
⑤ 車を修理のために預けたあいだに
修理業者により人身事故が起きた場合は
修理業者が運行供用者責任を負います。
⑥ 自家用車を合意のうえで
業務使用する会社の場合は
会社が運行利益を上げるので
運行供用者責任も有します。

* 個別諸事情で変化する場合あり

 ハンドブック
このように直接的 現実的に
運行している必要はなく
間接的支配でも認められ
運行を支持 制御する立場にあり
適切に運行されるよう監理すべき
立場であるということになります。
従って被害者は加害者側車両の
運転手だけでなくその車両の保有者
に対しても損害を賠償することができ
被害者救済の観点から
損害の回収できる枠が
拡大されることになります。
このことから
人身事故においては関係車両の
車検証を確認することはもちろん
車両の実質の支配者の確認も重ねて
することをお勧めします
ただ 一般的には
運転者が運行供用者となることが
多く 相手に賠償請求すれば
運行供用者責任を否定されることは
ないものとおもわれます。