聞き慣れない
『自然発車』という言葉を
知っていますか?
わかりやすくいうと
車から離れた後に何かの理由で
くるまが勝手に動き出して
しまうことをいいます
自然発車の定義は
「運転者の運転行為以外の原因で
車両等が動き出したことによって
発生した交通事故」のことを言います。
最初に この自然発車による
人身事故の発生推移を見ておきます。
全ての車両の自然発車による
人身事故は平成21年から平成
30年までの10年間で2,352件
発生しており 死亡事故が162件
重傷事故が387件 軽傷事故が
1,803件となっています。
死亡事故は平成21年から平成25年
までの5年間の合計が47件であった
のに対し 平成26年から平成30年
までの直近5年間の合計では115件と
約2.5倍に増加しています。
自然発車による人身事故は決して
多いとは言えない事故形態ですが
直近5年間の交通事故全体の
死亡事故率(死亡事故件数/人身
事故件数)が0.8%であるのに対し
直近5年間の自然発車による死亡
事故率は約11%と格段に高い
ことが分かりました。
そこで今回は全体の死亡事故が
減少している中 死亡事故が増加
傾向にある自然発車の事故に注目し
自然発車による人身事故を防ぐために
注意すべき点を考えます。
事故の特徴
■事故の対象
自然発車による死亡事故の大きな
特徴は 死者の約82%が
第1当事者 (事故当事者のうち
過失が一番大きい者以下1当)
の運転者ということです。
重傷事故の約64%も1当である
運転者自身が負っていることに
なります。
運転者自身が死傷しているという
ことから以下のような事故状況が
想定されます。
事故の多くは 運転者が車両から
降車し 何らかの理由により
動き始めてしまった車両に
運転者自身が轢かれてしまった
ものや 動き始めてしまった車両に
気づき車両を止めようとして
止めることが出来ずにそのまま
轢かれてしまった または
そのまま電柱や壁等の物件と車両に
挟まれてしまったのではないか
ということが考えられます。
■事故発生状況
乗用車、貨物車の人身事故件数は
ほぼ同数となっており 大きな差は
見られません。
しかし死亡事故に関しては 貨物車は
乗用車の約1.5倍となっています。
乗用車では普通車と軽自動車が約89%を
占めており 比較的車両重量の軽い
軽自動車や普通車でも自然発車による
死亡事故に繋がりやすい事が
分かりました。
■事故の要因
人的要因の内訳をみると 約92%が
不適切なブレーキ操作等を含む
操作上の誤りとなっており
ブレーキ等の適切な操作を出来て
いないことが事故の要因となっている
ことが分かりました。
駐車したはずの車が動き始めて
いることから 車に整備不良等の
原因があったことも考えられますが
整備不良等を含めた車両的要因が
あったのは約1% 環境的要因が
あったのは約4%でした。
以上より 自然発車が発生した
要因のほとんどは車両や道路環境に
原因があったのではなく
車両を操作する人の駐車方法に
問題があったことが分かりました。
■当事者の年齢及び免許取得経過年数
1当四輪車事故について 1当の
年齢構成を見ると 20代をピークに
高齢になるほど低くなっていきます。
しかし 自然発車による人身事故は
1当四輪車事故とは異なり
50~70代の割合が高く
その中でも60代の割合が
一番高くなっています。
自然発車全体の約83%は
免許取得後10年以上の
運転者が起こしています。
また死亡事故では約90%
重傷事故では約89%
軽傷事故でも約81%が免許取得後
10年以上の運転者が1当となって
いることが分かりました。
■事故発生場所
道路線形により区分した事故発生
場所の構成率を示したものです。
自然発車における死亡事故の
約60%が勾配3%以上の坂道で
起きています。
また重傷事故の約半分が
勾配3%以上の坂道で起きて
いることが分かりました。
勾配3%未満の緩勾配の
道路に比べ 勾配3%以上の
坂道では自然発車による人身事故が
発生すると死亡・重傷の重大事故に
つながりやすいことが
分かりました。
しかし 勾配3%未満の緩勾配の
道路でも重大事故は発生している
ことから 見た目では平坦に
見えても少なからず勾配が
あるものと運転者は考えなくては
いけません。
駐車場を含む一般交通の場所でも
自然発車による人身事故が多く
発生しています。
一般交通の場所の勾配は
事故データ上分かりませんが
事故が多く発生している理由は
駐車して降車する機会が多いことが
一因であると考えられます。
降車後にもしも車が動き出した
場合は 進んでいく方向の
近くに人がいる場合には
大きな大声を出して 逃げて
もらうという行動しかありません
ITARUDA 交通事故分析レ-ポ-トより